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ネットの誹謗中傷で警察は動かないの?

2021/12/17

基礎知識

ネットの誹謗中傷で警察は動かないの?

「ネットで誹謗中傷されてもどうせ警察は動かないんでしょ?」そういった投げやりな意見をよく耳にすることがあります。

警察庁公表の「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」によると、平成30年度における名誉毀損・誹謗中傷の相談が11406件あるのに対し検挙人数は240人と僅か2%程度になります。

この数字を見る限りネット誹謗中傷で警察が動く割合は低いと言えますが、警察が全く動かないわけではないことがわかります。

なぜ、警察は動いてくれないのでしょうか?


どのようなケースであれば警察は逮捕に踏み切ってくれるのでしょうか?

民事不介入

皆さんは”民事不介入の原則”という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

民事不介入の原則とは、犯罪(刑事事件)ではない個人間のトラブル(民事事件)に警察権は立ち入れないというのが原則です。

警察は事件を捜査し被疑者を逮捕することが仕事ですので、慰謝料請求や示談といった民事事件として扱うべきものについては動くことができないのは当然なのです。

「人の悪口や事実無根の内容を不特定多数の人が目にするネット掲示板やSNSに書き込むことは、侮辱罪や名誉棄損罪だから刑事事件なんじゃないの?」そう考える方もいることでしょう。

しかし、ある投稿内容が侮辱や名誉毀損にあたるかどうかの線引きは難しく、また、憲法で保障された表現の自由との兼ね合いから、そう易々と警察も立件、捜査をすることはできません。

その為、よほど悪質な投稿ではない限り「民事で解決できるでしょう」というのが警察組織の一般的な対応なのです。

警察が動いてくれるケース

ネットの誹謗中傷被害を受けた被害者がいて、警察が全く動かないのかと言えばそうではありません。

投稿回数や期間、内容からして”違法性が高い”事案であれば捜査、逮捕に動くことがあります。

本当にあった事案として、参院選比例代表に立候補して落選した大学教授に対し、
「犯罪者。死ね」などの書き込みを計33回行ったとして、大学4年生の学生が名誉棄損で警察に逮捕された事件もあります。
中傷が多数回行われたことで、違法性が高い悪質な行為と警察が判断したことが考えられます。

その他、長崎県在住の県職員の男(38歳)が、同県に住む30代女性の実名を出してわいせつな投稿を掲示板サイトに10回程度行ったとして、ストーカー規制法違反と名誉毀損の容疑で逮捕された事案もあります。

直近では、Twitterで某アイドルグループのメンバー5人を名指しして、違法薬物を使用していると中傷した男が逮捕されています。

名誉毀損罪や侮辱罪以外でも警察は動く

書き込み内容が名誉毀損罪や侮辱罪に該当しない場合でも、
以下のような犯罪が成立すれば警察は捜査に動きだします。

脅迫罪

ある人(またはその親族)の生命・身体・自由・名誉・財産に対して危害を加える内容。
例)「お前の娘ヤクザに売り飛ばすぞ」「交際時に撮った性行為の動画をネットにばら撒いたるからな」

威力業務妨害罪

無差別殺人や店舗等の爆破予告などの犯行予告、威力を用いて相手の業務を妨害する内容。
例)「新宿駅に設置した爆弾が○○年○○月○○日に爆発するぞ」「店員の態度がムカつくから仲間呼んで店を潰してやる」

偽計業務妨害罪

嘘やデマの情報で相手の業務を妨害する内容。
例)「ここのラーメン店のスープはネズミで出汁をとっている」「〇〇温泉は入浴剤で色付けしている」

名誉棄損罪や侮辱罪は「親告罪」です!

検察官が被疑者を刑事裁判にかけるためには起訴する必要があります。
被害者が告訴(通報)をして初めて起訴できる犯罪を「親告罪」といいます。

親告罪が設けられている理由は、被害者のプライバシー保護・負担軽減のためです。
事件として事実が明るみになることで被害者のプライバシーや利益が侵害される恐れがあるからです。

例えば、「Aさんは児童買春で逮捕歴がある」という書き込みは名誉棄損罪、「Aさんはどんな仕事を与えても役に立たない」という書き込みは侮辱罪が成立する可能性があります。

しかし被害者であるAさんからしてみれば、この書き込み内容が事実かどうかは別として、
これ以上、この書き込み内容が人に知れ渡ることは避けたいと考えることもあるでしょう。

にもかかわらず、Aさんの意図に反して警察が勝手に犯人を逮捕し、
検察官が起訴をして刑事裁判となれば、傍聴人はもちろんのことマスコミに報道されてAさんのプライバシーが脅かされ、日常生活をおくる事が出来なくなるリスクもあります。

上記の事態を避けるために、名誉棄損罪や侮辱罪は親告罪とされているのです。
逆に言えば、被害者が加害者の処罰を望まないのであれば、なんの罪にもなりません。

因みに、親告罪の告訴期間は「犯人を知ってから6ヶ月」とされており、
犯罪が終了した後の犯人を知った日は参入せず、その翌日から起算します。

告訴状を受理した捜査機関は必ず捜査を開始しなくてはならなくなり、さらに、起訴や不起訴の処分を下した場合は告訴人に速やかに通知し、不起訴にした場合の理由を告訴人に説明する義務が生じることになります。

そのため残念ながら、警察は告訴状を受理したがらない傾向があります。
まずは比較的受理されやすい被害届を提出し、捜査の進展状況によって後から告訴状を出す事が告訴(通報)のポイントでしょう。

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